事前練習を終えた後、桂浜へ向かう事にした。
優に十回以上高知に足を踏み入れてるのに桂浜は初めてだ。
仲間との決起会が控えているから滞在時間はあまりない。
桂浜見て、竜馬像見て、サクッとタクシーで市内に戻ろう。
軽い気持ちでバスへ乗り込んだ。
思ったよりも風光明媚。思ったよりもフォトジェニック。
i-Phoneでカシャカシャやりつつ散策をした。
一通り園内を歩いてまわり、さぁ帰ろうと乗り場に向かう。
タクシーはなかった。
一台も。
バスの時間を調べると、一時間に2本だけ。
閑散とした土産物屋の周辺に、
所在なげに漂っている観光客がチラホラといたのはそういう事か。
撤収したくても、できなかったのだ。
しょうがない。
早々にあきらめて、西陽眩しい、バス停前のベンチにぼんやり座った。
当然ながら決起会には遅れた。
まぁそれもご愛嬌。
前に座り、隣に座りする仲間たちと、互いのグラスにビールをグイと注ぎあう。
3年ぶりの再会。
誰もかれもあまり変わったようには思えないけど、
俺が仕事を変えたように、居場所を変えたり、家を買ったり、家族が増えたり、ちょっと重たい物を抱えたりしているのは、チラホラ聞いている。
現実の「この歳になるといろいろあんだよ」的な物を、
とりあえず置いて、
とりあえず隠して、
3日間は今この瞬間を存分に楽しもうと、多分みんなが思ってる。
だから一年に一度しか会わないこの仲間が、誰にとっても大事なんだ。
遠くても、金がかかっても、また来てしまうのはそういう事なんだ。
二次会に流れた。「安兵衛」という屋台の餃子屋。
いつもは打ち上げの最後の最後に行く店だ。
小ぶりの餃子は、パリッとした皮の中に、ニラと肉とにんにくがギッシリと詰まっていて、やめられないとまらない。
偶然道を通りかかった仲間の一人に見つかって、
そいつも巻き込んでさらに飲んだ。
汗を拭い、手でパタパタと頬を仰ぎながら、わいわいと食べて、飲む。
今年の高知は例年に比べ、少しだけ蒸し暑いけれど、それでも夜になると体に優しい風が吹いてくる。
思えば、タイも、台湾も、
俺が一方的に心地よさを感じる南の大地は、夜になると風が優しかった気がする。